[m] 夏も真っ盛りなので俺が集めた怪談コピペを貼るよ「せかとほひゃくものがたり」 21~40譚
さーてそれでは今週も張り切って怖い話を淡々と貼っていきます「せかとほひゃくものがたり」。2週目まで編纂した時点ではやくも残りストックが10個ぐらいしかないんですけど、これは見切り発車すぎた予感がひしひしひしひしぺたぺたぺたぺた…ぺたぺた…?



[目次] 人間が怖い話
幽霊が怖い話
反転系
今週の目玉




21. 恐怖のナポリたん


ある日、私は森に迷ってしまった。
夜になりお腹も減ってきた。
そんな中、一軒のお店を見つけた。
「ここはとあるレストラン」
変な名前の店だ。
私は人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。
……なんか変だ。しょっぱい。変にしょっぱい。頭が痛い。
私は苦情を言った。
店長:
「いっ今、新しいの作ってるところなんだから!
べ、別に…アンタのために作ってるんじゃないからねっ!
フンッ、余りものに料金なんて要らないわよっっ!
アンタからお金巻き上げてるなんて、噂立てられたらアタシが困るものねっ!」
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。今度は平気みたいだ。
「美味しかったよ」
「もうっ、あ…… ありがとうございましたっっ!」
頬を赤らめて走り去る店長。
私は店を出る。
しばらくして、私は気づいてしまった……

あの店長、もしかして私のこと………



22. メリーさん


ある日、俺は午後になったあたりから体に妙な違和感を感じていた。
しかし霊感の「れ」の字もない俺は、体調でも崩したか程度に思っていた。
道行く人がたまに俺のほうを見てびっくりするあたり、顔色が非常によろしくないのかもしれない。
こういうときは酒を飲んで早く寝るに限る。
コンビニで引きつった顔の店員から酒を買い、その日は10時前には寝た。翌朝、しっかり寝たはずだが体の違和感は消えていない。
朝の準備を済ませた後でふと昨日は携帯を朝かばんに入れたっきりで、一度も出さずに寝てしまったことを思い出しあわててチェックしてみた。
……留守電12件、しまった、誰か緊急の用事でもあったのか、とりあえず再生せねば

「私メリーさん、今○○駅にいるの」
「私メリーさん、今○○大学の前にいるの」
「私メリーさん、今○○教室の前にいるの」
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
「私メリーさん、さっきからあなたの後ろにいるの」
「私メリーさん、あなたの後ろにいるんですけどー、もしもーし」
「もしもーし、メリーさんですよーいい加減気づいてくださーい」
「メリーです…取り憑いた人が鈍すぎるとです…めりーです…」
「うー、一日一回くらいは後ろ見るもんでしょ普通!」
「ほらほら、あのおじさんとかめっちゃ私のこと見てるよ」
「な、なんでうつ伏せで寝るの!いいかげんこっちみなさいよ…」
「えぅ…ぐすん…メ、メリーです、この録音きいたらでいいので後ろみてください」

俺は背後の気配を確認すると、振り向かないで家を出て大学へ向かった。
その日俺の背後には、半べそかきながら後ろをついてくる少女がいたらしい。



23. ある四人家族


ある4人家族があった。おじいちゃん、おばあちゃんに若夫婦。
この若夫婦には子どもがなかったが、ついに念願の赤ちゃんが誕生した。
初孫でもあり、一家は大喜びであった。

ところがこの赤ちゃん、表情がない。笑うことをしないし、
喜怒哀楽を全く表現しない。そして、何ら言葉を発しなかった。

そして、この子が誕生してから丁度1歳の誕生日に「おじいちゃん」と言葉を発し、
翌日におじいちゃんがポックリ死んでしまった。
この後また、この子どもは言葉を一切発しなくなった。

やがて1年が経って、この子の2歳の誕生日。
今度は「おばあちゃん」と言って、翌日におばあちゃんが亡くなった。
そして、1年間この子はまた言葉を発しなかった。

それからまた1年が経って、3歳の誕生日。子どもが「おかあさん」と言って、
翌日に母親が死んでしまった。そしてまた、子どもは何も話さない。
ここまで来ると偶然とは思えず、父親は次の誕生日は自分の番かと、
不安でしょうがない。

やがてこの子の4歳の誕生日がやってきた。
そしてこの子が「おとうさん」と言った。
ついにこれで俺も死ぬのかと父親は恐怖に震えた。

翌日、隣の家のおじさんが死んだ。



24. お願い


学生の頃、夜部屋で寝てたら急に目が覚めて金縛りになった。
変な気配がしたので目だけ動かして窓の方を見たら顔が沢山浮かんでこっち見てた
なんか霊とかってどんなものかよくわかってなかった私は、そのとき心の中で
「宝くじが当たりますように」
ってその顔達にお願いしてみたら
すべての顔がハァ!?って表情になって消えた。



25. とどめ / 人間が怖い話


特別怖くはないんだが…。
知人に長距離トラックの運転手だった人がいる。ある山道でのこと。
前に走っていた他社のトラックが婆さんを跳ねたそうだ。
当然、救助すると思い見ていたら、暫く停車していたと思いきや、
急にバックし、まだ息のある婆さんに止めを刺していたそうだ。
知人は怖くなってその場を離れたそうだ。
後日、同僚にその一件を話すと、
「植物人間になって治療費を払うより死んだほうが安くて済む」
と言われたそうだ。



26. 少女の笑顔


とある田舎のとある峠道に自動車事故多発地点があった。
そこで事故を起こす車は決まって同じカーブでハンドルを切り損ねて
道の脇からがけ下に転落、というもので、
いつも現場の道路には急ハンドルを切ったようなタイヤの跡が付いていた。

そこでまた事故が起こった。
しかし今回はいつもと事故の内容が違っており、轢き逃げだった。
車が少女を跳ねてひき殺してしまったというものだった。

しばらくして轢き逃げ犯がつかまった。
取調室で犯人はこういった。
「少女が道の脇から、突然とても楽しそうな表情で飛び出してきたんです」
と。



27. 老婆がやってくる!


数年前のことですが。
道でばったり中学生の頃同級生だったN君に偶然会いました。
N君とは当時、たいして親しくもなかったのですが(彼はヤンキー系だったこともあり)
東京で同郷の人と出会えた偶然に嬉しくなり、携帯番号を交換しました。
数日後、彼から電話がはいり、「合コンするのだが、人数が足りない。」
とのことで、飲み会に呼ばれました(ちなみに私は男です)。

で、会場に行きました。柄が悪かったNなのに、どっからこんなお嬢様系の大学生とつながりをもてるんだろう?と思いつつ、Nの友人の男たちは話しも上手で、場を盛り上げるのも上手でした。
で、話しのながれで「怖い話」をNが披露することになりました。


話自体は非常にありがちだったのですが、語り口が非常にうまいためか
女のこはわりと本気でこわがっていました。
内容はうろおぼえなので書きませんが、ラストは
「この話を聞いた人は24時間以内にその老婆が部屋に訪れる」
「ただし、部屋のまどを数センチあけておけば現れない」
というようなものでした。こうやってかくと子供だましでしかありまえせんね。
しかし、女の子達は一様に「今日は絶対窓開けて寝る!」と言ってました。
その日はそんな感じ終わりました。

後日、飲み会に誘ってもらったお返しに、今度はこっちが女の子を用意して
飲み会を開こうと思い、Nに電話しました。「どう?」って聞くと
N「おー、その子達はやってもいいの?」
私「やるって、、まあ幹事の子は俺が狙ってるからだめだけど、他は本人次第じゃないの?」
N「そういうことじゃなくて。」

彼等は、飲み会をやるとほぼ確実にやるそうです。合意の上ではなく。飲み会のなかで、一人暮らしかどうか、部屋は何回にあるのか大体の住所を聞いたりときには尾行したり、かわいければ携帯から住所しらべたりするらしいです(←アラジンがどうの、とか言ってました)。
この怖い話をすれば、大抵窓の鍵があいてるので楽勝、とか言ってました。



28. アンケートの罠


約10年程前、俺は当時22歳の大学出たばかりの若造でした。保険会社の某支社勤務だったんだけど、H駅前でおっさんに「アンケートにご協力願えますか?」と声をかけられました。おっさんはごく普通。アンケートの内容は持ってる資格やら趣味やらについてでしたが、街頭アンケートなのに住所と氏名と勤務先記入欄があったのです。なんか勧誘の電話が会社にかかってきたらウザいなぁ、と思った俺は適当に偽名とか偽の会社名を記入して立ち去りました。

そんで外回りから会社に戻ると、他部門の先輩がH駅前で刺殺されたとかで大騒ぎ。仕事どころじゃなくなりました。
容疑者はあのアンケートのおっさん。加入していた保険契約にミスがあり、保険金がおりなかったため、うちの会社に恨みを持っていたとの事。すると、あの時点で正直に俺がアンケートに記入していたら、刺されてたのは…



29. カウンター


最近よくやるイタズラ。
俺の自宅兼事務所の電話には、マンションなどのセールスの電話が掛かってきていた。
それもリストに載ってしまったせいか、一日に10回以上なんてこともざらにあった。
自宅で仕事をしているため、これでは仕事にならない。
電話が掛かってきて、しつこく食い下がる業者を断る。そして、その5分後に同じ会社の別の人間から
「今なら××お安くなってますよ」なんてついさっき聞いたばかりのマニュアルどおりのセールストークをかまされると、
さすがにただ断るだけでは生ぬるいと思ってしまうわけで、ちょっとしたイタズラをしてやろうと思い立った。
まず『呪怨』のDVDを借りてきて音だけ録音する。
「…ア…ク…アァあアア…あァあア亜あアア」てあの喉にタンが絡まったような声を録音。

そして掛かってきた電話がいつもの低能マニュアル暗唱業者からだと確認すると、
受話器の口の部分に呪怨ボイスをエンドレスで流し続ける。あとは受話器の音声を
付属のイヤホンで抜いて、業者の反応を楽しむ。こちらの反応がないことに気付き、
マニュアル暗唱をやめた業者が「○○さーん、もしもし?」なんて
こっちの反応をうかがうと同時に聞こえる、あの気味の悪い声。
ヒッて短い悲鳴を上げて電話を切る女業者や、野太い声の落ち着いた説明から
急にあせって受話器を置く業者、さまざまな反応が楽しめた。
さすがに毎日はできないが、ときどきこんな風にして業者と遊んでいると、
掛かってくる電話の本数はだいぶ減った。

そして昨日、飯でも食おうかと思っているところに業者から電話、久しぶりに呪怨爆弾をセット。
そのまま便所に行ってコーヒー淹れて仕事部屋に戻ってくる。机の上の電話はまだ切れてない。
意外な気がした俺は「気付かずに説明続けてたら笑えるな」と思ってイヤホンを取り付けて耳に装着した。
「…ア…ク…アァあアア…あァあア亜あアア」聞こえてきたのはあの呪怨ボイスだった。
俺は受話器を叩きつけ、電話のジャックを引き抜いた。



30. 連結


消防の頃、電車に乗っていたときの話

友達と2人で車両の連結部分の所で遊んでいた。
電車の連結部分って下に鉄板があって蛇腹のような生地で繋がってるじゃない、その部分です。

前のドア、後のドア共に閉めて連結部分だけを単独の部屋としてその中に2人でいました。
カーブに入るときとか繋がってる蛇腹のようなものがうねっていて面白かった。
そしてしばらくそこにいた時、その蛇腹のような柔らかい部分を外から叩かれた感じがしました。
もちろん走行中に。

電車の走る音がうるさくてはっきりしなかったけど友達も気づいたみたいなので確証がもてた。
そして二人で怖がるどころか逆に内側から叩き返してやった、何発も。
そしたら向こうも何発も叩いてきた、右からも左からも。今度は確実に叩かれているのがわかった。
何回か叩く、叩かれるを繰り返してる内に叩き返されなくなった。
かわりにナイフのような刃物が蛇腹を突き破って出てきた、後、3cm長ければ顔に刺さっていた。



31. 騙されないぞ


飲み会終わって終電に乗った時の話。
帰宅ラッシュとは逆方向だったんで、めちゃめちゃ空いてた。
しばらくしたら車両に俺とくたびれたサラリーマン風おっさんの二人だけになった。
俺とそのおっさんはお互いそれぞれ車両の両端のシートに座ってた。
おっさんは気持ち良さそうに居眠りしてた。
相当疲れてるか、酔っ払ってたんだろう。
おれもちょっと眠かったから目を閉じた。
そしてモノの5〜6秒経っただけで目を開けた。
おっさんの姿が目に入った。
おっさん、シートを俺の方へ一列移動してるように思えた。
結構酔ってたからかそんなことどーでも良かったんで、また俺は目を閉じた。
また数秒でなんか嫌な感じがして、目を開いた。
今度は確かにおっさんがまた一列こっちの方へ移動してた。
ちょっとやばいかもしれないと思って、
スリでもやらかしたらとっ捕まえて駅員に引き渡してやろうと思い、
俺は半目を開けて寝たフリをしてみた。
案の定、おっさんは俺が目を閉じたのを確認して立ち上がった。

こっちへ来るか?と思ったが、そうじゃなかった。
おっさん、そのまま車両の真ん中でクルクル回り始めたんだ。
で、回りながら
「騙されないぞ〜騙されないぞ〜狸寝入りなんかに騙されないぞ〜」 ってつぶやき始めた。
さすがに俺もビビって、そのまま寝たフリをし続けて、次の停車駅で、
ドアが閉まる直前にすばやく立ち上がって逃げるように電車を降りた。
おっさんは追っては来なかった。
ただ、タクシー代も無くて2時間以上歩いて帰宅した。最悪だった。



32. フッ酸の刑


俺の友達はいつも違法駐輪をしていた。
他のヤツもしていたが、さすがに土地の持ち主が文句を言ったら普通の人なら他へ置いたりするだろうが、俺の友達は言っちゃ悪いが性格が悪く、しかし、ガタイが非常にイイという、見るからにチンピラやくざの見た目を良い事に土地の持ち主が文句を言っても知らん振りどころかわざわざ玄関の前に置くというヤラシー真似をしていた。

そんなヤツがある日、いつも通り堂々とあからさまに邪魔をするように置いてあった自転車に乗ると「変だ」という、なにかしめっぽいと「嫌がらせに水でもかけられたかなー」と馬鹿にしながらしばらくすると、異様に股間をはばかりなく押さえ苦しみだした「痛い、救急車!頼む」
場所が場所だけに自分もあせって救急車を呼び病院へ。
原因はフッ酸、どうやら自転車に付けられていたよう手当てが早くて助かったと言うか、あそこは骨が入っている訳ではないのでよかったもののケツの骨のダメージはでかかった。これからあいつはどうするつもりだろう、とにかくまだ入院しているのでここで終わり。



33. 初夜幽霊 / 幽霊が怖い話


ある学生がアパートに一人で暮らしていた。ある夜中に目が覚め時、部屋の中には彼以外誰もいないはずなのに、部屋の中から、人がいるような音が聞こえていた。それで目を開けて見ると、部屋に若い女性が座っていた。彼は状況が掴めないまま驚いて電気を点けた。すると女性は消えてしまった。
彼はそれらの音や女性は幻聴や幻覚がはっきり現れたものだと思い、自分の精神に深刻な異常があるのではないかと考え、不安になった。
それから彼は電気を消し、寝ながら幻覚について考えていると、またさっきの女性が現れた。
女性は自分の意思から独立し、何か意思をもって現れてるように感じるので、幽霊ではないかと思った。
でも女性を見ている時、周りの現実感が薄く、それは幻覚かもしれないと思った。
それで彼は、それが幻覚か幽霊かを確かめることにした。
始め女性に対し口や、直接心で話しかけたが、反応がなかった。
それで彼は、女性に対し、警戒することをやめて、親しく思うようにして感情を開き、意識や感覚を受け入れた。
すると彼女は表情が柔らかくなり、顔をこちらに向けた。それから彼は、彼女に対し心で直接に意識を伝えた。彼女はそれに反応し、明るい感じになりにこっとしたり、じっと見ていたり、拒否して戸惑った感じになったりなどした。
それに対し彼は、彼女が意識を受けて彼女自身で行為しているのか、それとも自分の意識で彼女を動かしているのか、わからなかった。そして彼女に対し、いろいろ想像しその意識を伝えた。
その内、彼は彼女に引き込まれ、彼女と一体になりたいことを強く意識し、欲求のまま彼女を誘導し、裸にしてしまった。

すると突然、彼は、自己のまとまりの感覚や現実感が崩れ、震えが起こり、それに対しとっさに自己のまとまりや現実感を引き戻そうとしたが、止まらず、同時に女性はうれしそうな表情で、しっかり彼をつかまえ、大きな高い声を出しながら、部屋一杯に膨らんでしまった。

その後、彼は精神分裂病と診断され入院し、今は、発病当時の状態と比べ通院できるまで病状が軽減した。しかし彼によると、彼は今も、肉体や心がその女性に飲み込まれたままになっている。
また自分の肉体をその女性の肉体とも感じるし、彼の心の中にその女性の心が入り込んだままになっている。



34. コンビニのモニター


後輩は、某ソンの深夜バイトをしていた。
そのコンビニは、深夜になるとかなり暇になるらしい。
後輩はいっしょにバイトしている先輩と、いつもバックルームでのんびり漫画など
読んで過ごしていた。
ある日のこと。
いつもと同じようにバックルームでお菓子を食べながら、
後輩は先輩と駄弁っていた。
仕事と言えばたまにモニターをチェックするくらいである。
モニターは画面が4分割されていて、レジ2箇所、食料品棚、本棚を映しているのだが、
ふと見ると、本棚のところに女の人が立っているのを後輩は見つけた。
腰まである異様に長い髪をした女の人だ。
「おかしいな、チャイム鳴らなかったぞ」と先輩はいぶかしむが、
たまに鳴らない事もあるので、さして深く考えず二人はまたしゃべり始めた。

しかし、である。
いつまで経っても女の人は動く気配を見せない。
本を読んでいるのかと思えば、何も手にしていない。
ひたすらじっと本棚を見つめているだけである。
「おい、こいつ万引きするつもりなんじゃないか」
先輩が言った。どことなくおかしな雰囲気のする女の人である。
後輩もその考えが浮かんだところだったので、頷いた。
二人で挟み撃ちすることにして、バックルームを出る。
先輩はレジ側から、後輩はバックルームへの出入り口から本棚へ向かう。
いざ本棚へ到着してみて、二人は首をかしげた。
そこには誰もいなかったのだ。
おかしい。絶対挟み撃ちにしたのに…。

すると、トイレのほうから水を流す音が聞こえてきた。
何だ、トイレに入っていたのか。
おかしな人だな、と思いつつ、二人はすぐバックルームへと戻った。
しかしモニターを見て、二人は初めてぞっとした。
さっきと全く変わらない立ち位置で、女の人が本棚を見つめていたのだ。
早い。早すぎる。
トイレからそこへ向かうのと、バックルームへ戻るのとでは、
明らかにこっちの方が早いはずなのだ。
しかも、なんで同じ格好で本棚に向かってるんだ?
もしかして、モニターの故障では。
顔を見合わせ、頷きあって二人はもう一度、バックルームから挟み撃ちの隊形で
本棚へと向かった。
すると、また女の人はいない。
冷や汗がにじむのを感じながら、今度は何も言わずに二人はバックルームへと戻った。
無言で、しかし真っ先にモニターを確認する。
「あ、いなくなってるぞ…」
先輩が呟いた通り、モニターからは女の人の姿は消えていた。
後輩の心中にほっとしたものが広がる。
よく確認しようと、先輩の横に顔を乗り出した。その時。

「待て、動くな」

先輩が突如、押し殺した声を出した。
は?と思ったが反射的に従う。
二人、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。
「いいか、絶対に今振り向くなよ」
やはり先輩が押し殺した声で言った。
何でだろう、と思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。
画面の反射で、自分の顔と先輩の顔が映っている。
しかし、その真ん中。
もう一つ、女の人の顔が覗き込んでいたのだ。
悲鳴をこらえ、後輩はまさしく硬直した。じっと耐えること数分、その女は
「…………」
と何事か呟くと、すっと離れた。そしてさらに1分。
もういいぞ、と言われて後輩はやっと息をついた。
恐る恐る振り向いても、誰もいない。
どくどく脈打つ心臓を押さえ、後輩はモニターから離れた。
「ここって、なんかでるんやなぁ〜」
先輩は感慨深げに呟き、後輩のほうに同意を求めた。
「そうですね」
と、先輩を振り向いて、後輩は再び硬直した。
その視線をたどったか、先輩もモニターのほうへ向き直る。
そこには、さっきの女の人が。しかも今度は、
カメラの方を向いて大口を開けて笑っている!!
もう二人は何も言わなかった。
何も言わず、某ソンを裏口から飛び出したと言う…。



35. 赤い落書き


俺が小学生の頃の話。
俺が住んでいた町に廃墟があった。
2階建てのアパートみたいな建物で、壁がコンクリートでできていた。
ガラスがほとんど割れていて、壁も汚れてボロボロだったから、地元の人間でも、あまりこの場所に近づくことはなかったらしい。

ある日俺は、友人と肝試しをすることになって、この廃墟に行くことにした。
まだ昼ぐらいだったから、建物の2階まで上がって建物を探索した。そしたら並んでいる扉のひとつに、文字が書いてあるものがあった。

友人と近づいて確認してみると、扉の前に「わたしは このさきの へやに いるよ」と書いてあった。
俺と友人は扉を開けて中に入り、先に進むことにした。

歩いて行くと分かれ道に突き当たって、壁に「わたしは ひだり に いるよ」と書いてあった。
少し怖くなったけれど、俺と友人はそのまま左に進むことにした。

すると両側に部屋があるところに突き当たって、壁に「あたまは ひだり からだは みぎ」と書いてあった。
友人はこれを見た瞬間に、半狂乱になって逃げだした。
でも俺はその場所にとどまって、勇気を出して右の部屋に行くことにした。

部屋に入り進んでいくと、突き当たりの壁に「わたしの からだは このしたにいるよ」と書いてあった。下を見ると

「ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね」

俺は急いで、その部屋の窓から飛び降りて逃げた。



36. 無線傍受


トラック乗りの頃、FMラジオが好きで毎日聴きながら爆走していた。
すると、車のFM無線らしき声が 俺のトラックのラジオに混ざってきた。
バックミラーを覗くと2台のライトがグングン近付いてくる。
俺は「あいつらの無線だな。丸聞こえだぞオイ」と、暇な旅路。少しワクワクした。
無線1「前にトラック2台走ってるわ」
無線2「ああ見える。抜かすか?」
無線1「いや、もうすぐ4車線になるから そこで抜こうや」
無線2「わかった」
やがて4車線に入り、前方のトラックと俺は右車線をそのまま走り、俺は後ろを走っていた2台が左車線から、スピードをあげ追い抜かしてゆく姿を見ていた。
するとラジオから
無線1「今の後ろのトラック見た?」
無線2「見た見た。可愛い女横に乗せてたな」
俺は一人。かなりビビッた俺は緊急停止。どうしても心臓のバクバクが治まらなくパニくってると、耳か頭の中か判らないが「見えないんだ?クスクス…」と。
トラック乗ってて1番怖い体験だったよ。



37. ホテルのドア / 反転系


幽霊が出るという噂のホテルの噂の部屋に泊まる事になったAさん。
Aさんは怖い話が大の苦手で、そのホテルに泊まるとどういう現象が起きるのか、詳しい話を知る友人からは敢えて聞かずにホテルへ宿泊。

部屋に入ると何となく嫌な感じはする。噂を聞いたせいだと納得し早々に休むことに。
Aさんがベッドで眠りに着くと、ドアを誰かがドン!と叩く。
そのもの凄い音にびくっと目を覚まして怯えるAさん。
フロントに電話を掛けようと思ったが、このホテルでどんな怪現象が起きるかを聞いていなかったAさんは
電話を掛けてフロントではなく別の何者かが電話に出たら…と想像して怖くなり断念。

一夜を明かせば…と布団を被り必死に眠りにつこうとするが無理な話。
余計目は覚めてくる。

ドン!ドン!ドドドドドドドドン!

とAさんの部屋の扉を物凄い音で誰かが叩いている。
ガチャガチャとドアノブを必死に回し、今にも誰かが中に入って来きそうだ。

やがて、ドアを叩く音もドアノブを回す音も、力尽きる様にトントン…カチャカチャと静まり始めた。
勇気を振り絞ってAさんはドアに近づき、ドア穴から廊下を覗いてみた。
廊下には誰もいない。
ドアを叩く音も、ノブを回す音も聞こえなくなり、漸くAさんは眠りに就いた。

翌朝、目が覚めると一目散に部屋を出てホテルを後にしたAさん。

後からそのホテルに詳しい友人に、その話をすると、
「本当にでたんだ…あのホテルは昔火事になって、Aの泊まった部屋で人が死んだらしいよ。
その死んだ人、煙と炎で混乱して、鍵の掛かった自分の部屋から出られず、狂ったように自分の部屋の中からドアを叩きまくって死んだんだって」



38. その手形はどこにあったの?


有名な怖い話であるでしょ、
トンネルの中に居るのに、雨が車の天井を叩く音がして
そんなわけ無い、って気付いて外に出てみたら天井が手形だらけだった―って話。

よく出来た話だなーってオカルト好きの友人と盛り上がってしまって
地元でよく出ると有名な、通りのほとんどないトンネルに男2人で検証ドライブに行くことになったんだ。
前もって2人して友人の車をピカピカに磨いたりして、しがない余興くらいにしか考えてなかった。

で、雨の夜を見計らって車で例のトンネルに入ったんだけど
…そしたら本当にするんだよ、バタバタ車体を叩く音が。
もう、外に出て確認するまでも無く、前後左右の窓からボンネット、サイドミラーにまで
子供の手くらいの小さな手形がべたべたと重ねられていった。2人の目の前で。
怖くなった俺たちは制限速度も無視でそのままトンネルを突っ切って
雨の中を遠回りで自分たちの街まで帰るはめになった。
その間フロントガラス一面にくっきりと、視界を遮り続けた無数の手形が、怖くて不快で忘れられない。

後日、その日はそのまま別れた友人に例の手形について聞いてみたら
「いや…拭いたら簡単に落ちたんだけどね…」 って言ったきり青い顔をして黙ってしまった。
彼にとっても早く忘れたい過去なんだな、とその後はお互い話題にあげないようにしている。



39. 霊柩車


Kさんという若い女性が、両親そしておばあちゃんと一緒に
住んでいました。おばあちゃんはもともとはとても気だての
よい人だったらしいのですが、数年前から寝たきりになり、
だんだん偏屈になってしまい、介護をする母親に向かってねちねちと
愚痴や嫌味をいうばかりでなく
「あんたたちは私が早く死ねばいいと思っているんだろう」などと
繰り返したりしたため、愛想がつかされて本当にそう思われるようになりました。
介護は雑になり、運動も満足にさせて貰えず、食事の質も落ちたために、
加速度的に身体が弱っていきました。最後には布団から起き出すどころか、
身体も動かせず口すらもきけず、ただ布団の中で息をしているだけ
というような状態になりました。はたから見ていても命が長くないだろうことは
明らかでした。

さてKさんの部屋は2階にあり、ある晩彼女が寝ていると、不意に外で
クラクションの音が響きました。Kさんはそのまま気にせず寝ていたのですが、
しばらくするとまた音がします。何回も何回も鳴るので、時間が時間ですし、
あまりの非常識さに腹を立ててカーテンをめくって外を見ました。
Kさんはぞっとしました。家の前に止まっていたのは大きな一台の
霊きゅう車だったのです。はたして人が乗っているのかいないのか、
エンジンをかけている様子もなく、ひっそりとしています。
Kさんは恐くなって布団を頭から被りました。ガタガタとふるえていましたが、
その後は何の音もすることなく、実に静かなものでした。

朝になってKさんは、両親に昨日の夜クラクションの音を聞かなかったかどうか
尋ねました。二人は知らないといいます。あれだけの音を出していて気づかない
わけはありませんが、両親が嘘をついているようにも見えないし、
またつく理由もないように思われました。朝になって多少は冷静な思考を
取り戻したのでしょう、Kさんは、あれはもしかしておばあちゃんを迎えに来たの
ではないかという結論に至りました。彼女にはそれ以外考えられなかった
のです。しかし、おばあちゃんは相変わらず「元気」なままでした。

翌日の夜にも霊きゅう車はやって来ました。次の夜もです。Kさんは
無視しようとしたのですが、不思議なことにKさんが2階から車を
見下ろさない限り、クラクションの音は絶対に鳴りやまないのでした。
恐怖でまんじりともしない夜が続いたため、Kさんは次第にノイローゼ気味に
なっていきました。

7日目のことです。両親がある用事で親戚の家に出かけなくてはならなく
なりました。本当はKさんも行くのが望ましく、また本人も他人には
言えない理由でそう希望したのですが、おばあちゃんがいるので誰かが
必ずそばにいなくてはなりません。Kさんはご存じのようにノイローゼで
精神状態がすぐれなかったために、両親はなかば強制的に留守番を命じつつ、
二人揃って車で出ていきました。Kさんは恐怖を紛らわそうとして出来るだけ
楽しいTV番組を見るように努めました。おばあちゃんの部屋には恐くて
近寄りもせず、食べさせなくてはいけない昼食もそのままにして放っておきました。
さて両親は夕方には帰ると言い残して行きましたが、約束の時間になっても
帰って来る気配がありません。
時刻は夜9時を回り、やがて12時が過ぎ、いつも霊きゅう車がやって来る
時間が刻一刻と迫ってきても、連絡の電話一本すらないありさまなのでした。
はたして、その日もクラクションは鳴りました。Kさんはそのとき1階にいたのですが、
間近で見るのはあまりにも嫌だったので、いつもの通りに2階の窓から外を見下ろし
ました。

ところがどうでしょう。

いつもはひっそりとしていた車から、何人もの黒い服を着た人達が下りてきて、
門を開けて入ってくるではありませんか。Kさんはすっかり恐ろしくなって
しまいました。そのうちに階下でチャイムの鳴る音が聞こえました。
しつこく鳴り続けています。チャイムは軽いノックの音になり、しまいには
もの凄い勢いでドアが「ドンドンドンドンドンドン!」と叩かれ始めました。
Kさんはもう生きた心地もしません。ところがKさんの頭の中に、
「 もしかして玄関のドアを閉め忘れてはいないか」という不安が浮かびました。
考えれば考えるほど閉め忘れたような気がします。Kさんは跳び上がり、
ものすごい勢いで階段をかけ下りると玄関に向かいました。ところが
ドアに到達するその瞬間、玄関脇の電話機がけたたましく鳴り始めたのです。

激しくドアを叩く音は続いています。Kさんの足はピタリととまり動けなくなり、
両耳をおさえて叫び出したくなる衝動を我慢しながら、勢いよく
受話器を取りました。「もしもし!もしもし!もしもし!」

「○○さんのお宅ですか」

意外なことに、やわらかい男の人の声でした。

「こちら警察です。実は落ち着いて聞いていただきたいんですが、
先ほどご両親が交通事故で亡くなられたんです。あのう、娘さんですよね?
もしもし、もしもし・・・」

Kさんは呆然と立ちすくみました。不思議なことにさっきまでやかましく叩かれて
いたドアは、何事もなかったかのようにひっそりと静まり返っていました。
Kさんは考えました。もしかしてあの霊きゅう車は両親を乗せに来た
のでしょうか?おばあちゃんを連れに来たのでなく?
そういえば、おばあちゃんはどうなったのだろう?
その時後ろから肩を叩かれ、Kさんが振り返ると、動けない筈の
おばあちゃんが立っていて、Kさんに向かって笑いながらこう言いました。

「お前も乗るんだよ」



40. 晴美の末路 / 今週の目玉


へへへ、おはようございます。流石に皆さん怖い話をしなさる。今日は生憎天気が悪いようで。
あの時も丁度今日みたいな雨空だったな。あ、いえね、こっちの話でして。え?聞きたい?
そんな事誰も言ってない?はぁはぁ、すみませんね、私も毎日苦しくて。正直この話を誰かに
打ち明けないと気が狂いそうでして。それでは、早速暇つぶしにでもお読み下さい…へへへ。

もう10年ほど前になりますかね。当時、私はとある地方の寂れたスナックで働いてましてね。
そこで、店の女の子の1人と良い仲になっちまったんですよ。ま、良くある話です。へへへ。
アパートに同棲してまして。スナックのママも他の従業員もみな承知の上でしてね。
まぁそこそこ気楽に楽しく暮らしてましたわ。しかし、この、仮に晴美としましょうか。
晴美はかなりのギャンブル狂でして。パチンコ・競馬・競艇・競輪・ポーカー・マージャン、
なんでもござれでして。これが勝ちゃ良いんですが、弱いんですよ。賭け事にも才能ってありますよね。
案の定、借金まみれになっちまった。それでも何とか、働きながら返してたんですよ。
え?私はどうかって?私はあなた、ギャンブルなんてやりませんよ。そんな勝つか負けるか
分からないのに大金賭けられますかいな。以外に堅実派なんですよ。へへへ。…話を戻しましょうか。
同棲しだして、2年ほど経った頃でしたかね。とうとう、にっちもさっちも行かなくなっちまった。
切羽詰まった晴美は、借りちゃいけない所から金借りちゃったんですよ。まぁヤクザもんですよね。
ある夜、アパートに2人でいる時に、男が2人 やって来ましてね。見るからにそれモンですよ。
後は大概、お分かりですよね?TVや映画で良くある展開と同じですよ。笑っちまうくらい同じです。
金が返せないのなら、風俗に沈める、の脅し文句ですよ。それでも晴美は1週間、1ヶ月待って
下さい、と先延ばししながら働いてましたよ。え?私?私は何も出きゃしませんよ。
ヤクザもんですよ?とばっちりは御免です。え?同棲しておいてそれはないだろうって?
はぁはぁ、ごもっとも。でもね、皆さんもいざ私のような環境に置かれると分かりますって。

ある夜、いつもの様にアパートに取立てがやって来ましてね。所がちょっと様子が違うんですよ。
幹部って言うんですか?お偉いさん来ちゃいまして。一通り晴美と話した後、
つかつか〜と私の方にやって来まして、お前があいつの男か?と聞くんですよ。
ここで違う、とは言えませんわね。認めると、お前にあいつの借金の肩代わりが
出来るのか?と聞くんですよ。出来るわけないですよ。その頃には借金1千万近くに
膨れ上がってましたからね。当然無理だと言いましたよ。そしたらその男が、
あぁ、今思えば北村一輝に似た中々の良い男でしたね。あ、へへへ、すみません。
話を戻しましょうか。その男が、ならあの女は俺らがもらう。ってんですよ。
仕方が無いな、ともう諦めの境地でしたよ。私に害が及ばないのであれば、
どうぞご自由に、と。え?鬼?悪魔?鬼畜?はぁはぁ、ごもっとも。でもね、
水商売なんて心を殺さないとやってけないんですよ。晴美に惚れてたならまだしも、
正直体にしか興味ありませんでしたからね。え?やっぱり鬼畜?はぁはぁ、結構です。
それでもって、男が妙な事を言い出したんですよ。あの女の事を今後一切忘れ、
他言しない事を誓うならば、これを受け取れ。と言うと、私に膨れた茶封筒を
差し出したんですよ。丁度百万入ってましたよ。でもね、嫌じゃないですか。
ヤクザから金もらうなんて。下手したら後で、あの時の百万利子つけて返して
もらおうか、何て言われちゃたまりませんからね。断りましたよ。そしたら、
その幹部の連れのチンピラが、ポラロイドカメラでもって私を撮ったんですよ。
そしてその幹部が、この金を受け取らなかったら殺す、って言うんですよ。
何で私がこんな目に、と思いましたよね。渋々受け取りましたよ。そして、
もし今後今日の事を他言する様な事があれば、お前が世界のどこにいても
探し出して殺す、と。その時、私は漠然とですが、晴美は風俗に沈められるのでは
無く、他の事に使われるんだな、と思ったんですよ。もっと惨い事に。

晴美はある程度の衣服やその他諸々を旅行鞄に詰め込み、そのまま連れて行かれました。
別れ際も、私の方なんて見ずにつつ〜と出て行きましたね。結構気丈な女なんですよ。
1人残されたアパートで、私はしばらくボーッとしてました。明日にでもスナック辞めて
どこかへ引っ越そうと思いましたね。嫌ですよ。ヤクザに知られてるアパートなんて。
ふと、晴美が使っていた鏡台に目がいったんですよ。リボンのついた箱が置いてあるんです。
空けて見ると、以前から私の欲しがってた時計でした。あぁ、そういえば明日は私の誕生日だ。
こんな私でも涙がつーっと出てきましてね。その時初めて、晴美に惚れてたんだな、
と気がつきました。え?それでヤクザの事務所に晴美を取り返しに行ったかって?
はぁはぁはぁ、映画じゃないんですから。これは現実の、しょぼくれた男のお話ですよ。

翌日、早速スナックを辞めた私は、百万を資金に引っ越す事にしたんです。
出来るだけ遠くに行きたかったんで、当時私の住んでた明太子で有名な都市から
雪祭りで有名な都市まで移動しました。そこを新たな生活の場にしようと思った訳です。
住む場所も見つかり、一段落したので、次は仕事探しですよ。もう水商売はこりごり
だったので、何かないかなと探していると、夜型の私にピッタリの、夜間警備の
仕事がありました。面接に行くと、後日採用され、そこで働くことになったんですよ。
それから約10年。飽きっぽい私にしては珍しく、同じ職場で働きました。
え?晴美の事?時々は思い出してましたよ。あの時計はずっとつけてました。北国へ来てから
新しい女が出来たり出来なかったりで、それはそれで、楽しくは無いですが平凡に暮らしてましたよ。
私、こう見えてもたま〜にですが、川崎麻世に似てるって言われるんですよ。
え?誰も聞いてない?キャバ嬢のお世辞?はぁはぁ、失礼しました。
それで、つい1ヶ月前ほどの話です。同僚のMが、凄いビデオがある、って言うんですよ。

どうせ裏モンのAVか何かだろうと私は思いました。こいつから何回か借りた事が
あったので。そしたらMが、スナッフビデオって知ってる?って言うんですよ。
私もどちらかと言うと、インターネットとか好きな方なんで、暇な時は結構
見たりするんですよ。だから、知識はありました。海外のサイトとか凄いですよねぇ。
実際の事故映像、死体画像、などなど。で、ある筋から手に入れて今日持って来てるんだが見ないか?
ってMが言うんですよ。深夜3時頃の休憩時間でしたからね、まぁ暇つぶしくらいには
なるだろうってんで、見ることにしたんですよ。私は、どうせフェイクだろうと
疑ってかかったんですけどね。ビデオをデッキに入れ、Mが再生ボタンを押しました。
若い全裸の女が、広い檻の中に横たわっていました。髪の毛も下の毛も、
ツルツルに剃りあげられていました。薬か何かで動けないのか、しきりに眼球だけが
激しく動いていました。晴美でした。私は席を立ちたかった。でも何故か動けないんですよ。
やがて、檻の中に巨大なアナコンダが入れられました。何か太いチューブの様な物を
通って。大げさじゃなしに、10m以上はあったんじゃないでしょうかね。
それはゆっくりと晴美の方に近づいて来るんですよ。Mが凄いだろ、と言わんばかりに
得意げに私の方を、チラチラと横目で見てきます。それは、ゆっくりと巨体を
しならせ、晴美の体に巻きつきました。声帯か舌もやられてるんでしょうか、
晴美は恐怖の表情を浮かべながらも、声ひとつあげませんでした。パキパキ、と言う
野菜スティックを2つに折った様な音がしました。晴美の体が、グニャグニャとまるで
軟体動物の様になっていったんです。10分ほど経ったでしょうか。それが大口を開けました。
晴美のツルツルになった頭を飲み込んだんですよ。
ここからが長いんだ、とMは言い、早送りを始めました。それは、晴美の頭部を
飲み込み終えると、さらに大口を開け、今度は肩を飲み込み始めました。
胴体に達したとたん、テープが終わりました。続きが、後2本あるんだ、と
Mが言ったんです。もういい、と私は言うと、逃げるようにビルの巡回に戻りました。

それからなんですけどね、いつも同じ夢を見るんです。晴美の顔をした大蛇が、
私に巻きつき、締め付けてくるんですよ。そして体中の骨を砕かれ、頭から晴美に
飲み込まれるんです。凄まじい激痛なんですが、逆にこれが何とも言えない快感でしてね。
晴美の腹の中でゆっくり溶かされ始める私は、まるで母親の胎内に戻った様な
安心感さえ感じるんですよ。え?そのビデオはどうしたかって?Mから私が買い取り
ましたよ。それこそ、給料何ヶ月分かの大枚はたいてね。3本全部見て、
少し泣いた後、私は全てビデオを叩き壊しました。

それで、深夜仕事をしてると、晴美を感じるんですよ。
ビルなどの屋内を1人で見回るでしょう?すると、後ろからピチャピチャと
足音が聞こえてくるんですよ。振り返ると、誰もいない。でまた歩き出すと、
濡れた雑巾が床に叩きつけられる様な音で、ピチャピチャと。晴美かな、
と思うんだけれども、一向に姿を現さないんですよ。感じるのは気配と足音だけ。
そんな事が数日続き、流石に精神的にまいってしまいましてね、今現在、
休暇と言う事で仕事を休んでるんですよ。3日前です。とうとう晴美が現れたんですよ。
深夜、自宅のベッドでボーッと煙草をふかしていたら、白い煙の様な物が
目の前に揺れ始めたんですよ。煙草の紫煙かな、と思ったんですが、動きがおかしい。
まるで生きてるように煙がゆ〜らゆ〜らと形をとり始めたんですよ。
晴美でした。既に溶けかかり、骨が砕けた全身を、マリオネットの様に揺らし、
「まだある」方の眼球で、私を見つめてきました。何かを言いたげに口を動かしていますが、
舌が無いのか声帯が潰されているのか、声にならない声で呻いていました。
どの位の時間が経ったでしょうかね。いつの間にか晴美は消えていたんですよ。
恥ずかしい話、私は失禁と脱糞をしていました。はぁはぁはぁ、汚くてすみませんねぇ。
次の日の夜も晴美はやってきました。もう私はね、晴美に呪い殺されてもしょうがない
んじゃないかと思い始めてましてね。晴美が再び現れるのを心待ちにしてた部分もあったんです。
やはり、晴美は何か言いたげに口を動かしています。私は駆け寄り、
何が言いたい?私はどうすれば良いんだ?時計、時計、時計ありがとう、
あの時何もしてやれなくてすまない、時計は大事に持ってる、時計は、時計は。
半狂乱のまま、私は叫び続けたんです。すると、晴美が折れた首を健気に
私の方に近づけて、言ったんです。途切れ途切れながらも、ハッキリと聞き取れました。


「わたし、あんたのこどもほしかったな」


今日も夜が来る。
[2010.08.14 20:47] | [m]emo  |  TOP↑