75日間の手記 - 8月27日
A memorandum for 75 days. - Aug. 27

運命の日, 8月27日
確かに、前兆が全くなかったと言えばそれは全くの嘘になるのだろう。 以前の父はあまり残業もなく、たまに残業があるときも必ず母に電話をいれていたように記憶している。 いつからだろう、仕事に行っているはずの父がふらりと昼前に帰ってきたり、かと思えば 今度は深夜3時過ぎに玄関のドアを叩く。私と父の関係は決して良好だったとは思っていない。 父は変わってしまっていたのだろう。しかし、私はそんな父に興味を失っていたから、 気付くことはできなかったのだ。
そんな父が、まさか世間を騒がしていた、 あの連続女子高生失踪事件に絡んでいたとは想像がつかなかったとしても、 私には仕方のないことだとも思う。 何か月も前からニュースやワイドショーで報道されていた。 狙われているのは素行の悪そうな女子高生たち。 きっと、事件に巻き込まれた人もいれば、ただ失踪しただけなのに一緒に扱われている人もいる。 世の中は危ないね、などと友だちと話したりもしていた。そんな事件だった。
父の逮捕をはじめて知ったのは、ニュースでもワイドショーでもない、一本の電話だ。 警察からの電話だった。相手がどんな人だったかも、どんなことを話したかも、もう覚えていない。 ただ、父を逮捕しました、という内容だけが今でも私の頭のなかをぐるぐる回っている。 そのあとのことは、全部ワイドショーで知った。 援助交際をしていた女子高生の遺体が、郊外の山から見つかったそうだ。 興奮したアナウンサーが現在警察が余罪を追及していますと叫んでいた。 そして、次に映った映像を私は忘れない。

父の名前と、父の顔写真。

私は叫びながら、仕事に出ている母の携帯に電話を掛けていた。