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＠少しだけまじめに期待値のこと

たとえば、10時にくるバスがあるとして、君は9時から10時の間にランダムで訪れるとする（一様分布）。そうすると君が待つ時間は、9時にきたら60分、9時半にきたら30分、9時59分にきたら1分というように10時に近ければ近いほど短くなる。9時xx分 にくるのなら 60-xx分 が待ち時間だ。どのxxについても9時xx分に到着する確率は1/60なので期待値は (60+59+58+…+1)/60 = 30.5分 になる。分単位で考えたけど秒単位とか連続時間単位にすると小数部分はなくなってジャスト30分になる。こうやって次のバスがくるまでの時間の期待値は計算できるわけ。

モテ期が30回来るってことは、0歳から60歳の間にモテ期というバスの到着ポイントが30個あるってことになる。ここでは簡単のために最後のモテ期は60歳ジャストでくることにしよう。
いま、次のモテ期がくるまでの時間の期待値を考えたいので、自分が0歳から60歳の一様分布のように動くとしてさっきみたいに計算すればいい。

ここで大事なことはふたつある。
ひとつめは、モテ期と次のモテ期までの間の距離は2年より短かったり長かったりするけど、合計すると必ず60年になるということ。
ふたつめは、モテ期と次のモテ期が短いところ（たとえば1週間とか）に自分がいる確率は小さいということ。
特にこのふたつめが超大事だったりする。


＠モテ期が偏るとこうなる

A君の場合を考えてみよう。A君は実にかわいそうに偏ったモテ期の持ち主で、0歳から1歳の間に29回のモテ期があり、30回目のモテ期は60歳のときだった。60歳のときに出会った女子高生と結婚したがその2年後には心臓発作で亡くなった。A君は莫大な遺産をかかえていたが、その全てが女子高生（このときにはもう女子大生）のもとに入ることとなった。その女子高生が毒を盛ったんじゃないかともっぱらの噂ではあったが真相は闇の中だ。

さて、A君にとって次のモテ期がくるまでの時間の期待値はどうなるだろうか。最初の1年間はものすごいペースだ。2週間に1回はモテ期がきている。しかし1歳になるやいなや次のモテ期までは59年になってしまった。これをさらに簡略化して次のように考えよう。
　 0歳のとき→あと 0年
　 1歳のとき→あと59年
　 2歳のとき→あと58年
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　58歳のとき→あと 2年
　59歳のとき→あと 1年
さてあとはこの平均値を計算すればいい。やっぱり簡単のために1年ごとに計算するが (0+59+58+…+2+1)/60 = 29.5年 となる。あれ、60年に30回だから2年に1回ぐらいくるはずで、平均は1年になるはずだったのに、この29.5年ってどういうことなの？　29.5年…それは小学5年生のあの娘もアラフォーになるほどの悠久の刻…。

なんでこんなことになるのかっていうと、上でちょこっと話したけど
　モテ期と次のモテ期が短いところに自分がいる確率は小さい
　モテ期と次のモテ期が長いところに自分がいる確率は大きい
ということが原因。3つ以上の、モテ期とモテ期とモテ期の間にちょっとでも偏りがあると、バランスの取れてるときと比べて次のモテ期までの期待値は必ず増えちゃう。逆に言うと、次のモテ期がくるまでの期間の平均が一番短くなるのは、モテ期が等間隔にくるとき、つまり2年ごとにくるときってことになりそうだ。

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この問題はバスの待ち時間問題として有名です。
セカ徒歩を読んでる皆さんはバスとか時刻表で調べてくに違いないから、ぜんっぜんっぜん問題ないはずだけどね！！

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父はタバコもギャンブルもやらなかった。酒もときどき一人で飲む程度。父は真面目な人だった。父が家に帰ってくるのはいつも6時ごろだった。だから、私はあまり寂しいと思った記憶がない。

あとから知った話になるけど、父は子育てのために忙しい転勤のある企画部署から、転勤がなく定時に帰ることのできる小さな関連会社に異動希望を出していたらしい。年収はさがり決して裕福ではなかったけど、私は寂しい思いをせずに済んだのだと思う。

思春期になると、私も人並みに父親という存在に子どもじみた嫌悪感をいだくようになった。携帯電話を持たせてくれなかったのも嫌悪感に拍車をかけた。口に出しては言わなかったけど、父の洗濯物と自分の洗濯物を分けて洗っていたら父にバレた。父は何も言わなかった。けれど父が悲しんでいるのがありありとわかった。父が一人でお酒を飲んでいたその夜、私は罪悪感でいっぱいで眠ることができなかった。

思えば、私がブラジャーをつけたいと泣いてせがんだときも、初潮をむかえてパニックになってわあわあ泣いたときも、父は戸惑いながら精一杯できることをやってくれたのだと思う。
私の反抗期はそう遠くないうちに終わり、その後男の子と一度だけ付き合ったけど子どもっぽさが嫌になりすぐに別れた。

私立の大学に行く金銭的余裕はなかったので、私は高校を卒業すると同時に事務職として働き始めた。いまの夫とはそこで出会った。馴れ初めは省略するけど、夫は父と似た真面目な人で三年間付き合ったあと結婚を決めた。

夫が父に挨拶に行った。父はほとんど言葉を発しなかったが、最後に「娘をお願いします」と言って、私は泣きそうになった。その夜、父と初めて二人でお酒を飲んだ。そこで私は母が家を出て行ったのではなく、亡くなっていたことを聞いた。母は生殖機能に問題があり、おそらく妊娠できないであろうこと、そして万が一妊娠できたとしても産めないだろうこと。奇跡的に母は妊娠したが、父は産むことに反対したこと。しかし母の決意は固く結局産むことになったこと。そして、医者が予想したように私を産んだ母は急激に弱り、死んでしまったこと。
父が箪笥の奥から写真を持ってきた。それは私がいままで一度も見たことのなかった母の写真だった。写真の中の母はびっくりするほど私と似ていた。父も「お前は母親とそっくりだ」と呟いた。成長するにつれ母に似ていく私、父はどのような気持ちで育ててくれたのだろうか。
他にもいっぱい話をした。母の若いころの話や、母との結婚のせいで親戚と疎遠になったこととか、いっぱい話をした。「これで母さんに胸を張って会うことができるよ」と父は笑った。

結婚式で父は泣いた。泣くんだろうなと思ってはいたけど、私も釣られて泣いてしまった。夫も泣いていた。いい結婚式だったと思う。

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結婚式が終わって数ヶ月が経った頃、父が会社を辞めました。今までやりくりした貯金と退職金で暮らすと父は言いました。式の直前に私たちは実家近くの分譲マンションを買ってそこに住んでいたので、この頃には週に一度ぐらいしか父とは会っていませんでした。

ある日実家に戻ると、なんだか物が少なくなっているような気がしました。父に尋ねてみると、食器とか要らないものが多いから捨てたといいました。スペースはあるんだし、何も捨てなくてもいいのに、と思いましたが父はいいんだと言いました。父の本棚もなくなっていました。中身は古本屋に売って、棚は捨てたんだそうです。
この頃、実家に帰ると父は縁側に座っているか寝ているかのどちらかでした。体調が悪いわけではなさそうでした。しかし、父がなんだか希薄になっているように感じるのです。

ある日、テレビが壊れていることに気づきました。最近つけていないから気づかなかったとのことです。以前の父はずっとテレビをつけている人だったし、いやな予感がしました。夫と相談して、プラズマテレビを父にプレゼントしました。父はとても喜んでくれましたが、電源はほとんど入れられてないままのようでした。

父がいなくなってしまう気がしました。それくらい父の気配は希薄になっていたのです。
いまさら思い当たったのですが、父にとって私を立派に育てあげることが全てだったのかもしれません。

友だちに両親が離婚した子がいます。母親の男グセが最悪で、彼女が高校生になる前に父親を捨て出て行ったそうです。父親はその後再婚せず、男手ひとつで彼女は育てられました。私と似たような境遇です。彼女が結婚し家を出て行くと、父親は目に見えて元気がなくなったそうです。しかし孫ができると、それはもう目に入れても痛くないような可愛がりようで、今も彼女と旦那さんが仕事にでている昼間は預かってくれているそうです。

私がその話を夫にすると、夫は賛成してくれました。夫も、私の父があまりにも元気がないので、自分が結婚したせいだろうかと悩んでいたそうです。
私は念のためにと夫に言われ、産婦人科に検査にいきました。

しかし、検査の結果、私は妊娠できないからだであることがわかりました。正確には、妊娠自体は（難しいけど）不可能ではないけれど、出産に私の身体が耐えられないのだろうということでした。調べてはいませんが、もしかしたら母と同じだったのかもしれません。その話を夫にすると、子どもは諦めようと言いました。

いま、実家には私の部屋以外はほとんど物がありません。食事や睡眠に使う物や生活必需品だけです。そんな中でお父さんは縁側に座ってぼーっと外を眺めています。そこから見えるのは、塀と雑草と、使っていない物干し竿だけです。眺めていても何も変化はありません。お父さんは私が訪ねるととても喜んでくれるけど、私が帰るとまた縁側に座ってしまいます。

私がもし子どもを産まなければ、お父さんは消えてしまうと思います。
でももし子どもを産もうとして失敗すれば、お父さんも、夫も悲しみます。万が一子どもだけは助かったとしても、夫にお父さんと同じ茨の道を歩かせてしまう。

私はどうすればいいのでしょうか。このままじゃお父さんが消えてしまう。でも夫にお父さんと同じつらさを味わわせることもできません。どうすればいいのでしょう。お父さんが、消えてしまう。お父さんが、いなくなってしまう。